「コロナ禍の介護現場の実態」
埼玉県平和委員会主催のピースカフェに、久しぶりに参加しました。
今回のテーマは「コロナ禍の介護現場の実態」、お話してくださったのは訪問介護ヘルパーとして働く藤原るかさんでした。
るかさんは介護保険が始まる前の1990年からヘルパーとして働いてきた方で、2002年に開かれた「国際高齢化問題会議」スペイン・マドリード集会にNGOの一員として参加されたり、2019年には「人手不足は国の責任」と、国を相手に裁判を起こした方でもあります。
昨日までの日本のコロナ感染者数は641万5473人。
昨日の東京都の発表では自宅療養・待機の「在宅率」は95%とのことです。
こうした状況の中で「訪問介護ヘルパーが陽性者の自宅に訪問しないわけがない」との、るかさんの言葉。
感染リスクと闘いながらの訪問に対し、ヘルパーさんには危険手当などの手当てが一切ついていないというお話がありました。
訪問診療の医師には28,500円、訪問看護師には12,000円の危険手当が出されているのに、ヘルパーにはゼロだというお話でした。
ただ私も調べてみましたが、医師や看護師への危険手当(特別手当)を保障する厚労省の通知などは見つけられなかったので、もしかしたら自治体独自の支援なのかもしれません。
いずれにしても、一般の医療でもコロナ感染でも在宅療養を重視するとの方針を示しながら、そこで働く人々に何の手当もしない国の姿勢が問われます。
3月23日に開かれた厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード に、日本老年医学会・日本在宅医療連合学会・日本プライマリケア連合学会の3学会が高齢者の療養のあり方についての提言を提出しました。
現在は高齢者がコロナ感染した場合は原則入院とされていますが、それで本当に良いのかと、エンドオブライフを過ごす高齢者の療養の場としてふさわしい場所を検討するべき・・・、そんなことが問われ始めています。
検討すること自体には私は賛成ですが、おそらくその結果は在宅重視の方向がさらに強化されることと思います。
しかしそれでも、在宅療養の現場で働くヘルパーさんをはじめとした職員への保障・手当は置き去りにされるんだろうなぁと思います。
こういう話が出てきた背景にはコロナ禍で入院・入所施設の面会が制限される中、高齢者が家族とお別れもできずになくなっていく状況の中で、家族にも抱えきれない不全感ばかりが残されるような現状を変えなくてはとの善意だとは思います。
が、在宅療養を支える人々への手当てが十分に検討されることなく、更なる在宅重視へのシフトは素直には喜べません。
話がずいぶんそれてしまいました💦
るかさんのお話です。
介護保険制度がスタートして22年の間に、制度もかなり変わってきました。
良い方に変わったのではなく、困った方への変化です。
当初は訪問介護の家事援助、訪問時間は90分がスタンダードでした。
それだけあればゆっくりと利用者さんとお話もでき、その方がどんなふうに暮らしたいのか、何を大切にして生きている方なのかということも把握しながら支援することができました。
しかし今は20分~45分です。
そうするとやるべきことをやるだけで手いっぱいで、その方を理解したり、観察したり、変化を察知するなどの専門的なケアに時間をとることができません。
韓国の介護保険制度では「情緒的ケア」をケアとして認めていますが、日本の介護保険制度はそれを認めていません。
ヘルパーさんは細かい時間刻みでたくさんの利用者さんの家を訪問しています。
しかし介護報酬は訪問時間のみで単価が設定されているので、移動時間の給与保障は事業所が身銭を切ってしなければなりません。
しかし介護事業所の収入源は訪問介護報酬のみなので、身銭を切ればそれだけ経営は厳しくなります。
その改善を求めても、国は決して改善しようとはしません。事業所任せです。
訪問介護事業は移動時間の保障も、感染対策もすべてが事業所任せにされていて、頑張れば頑張るだけ経営が厳しくなる状況。
しかも訪問時間を短く制限され、専門性を発揮することもできないような状況に追い込まれ、事業としての魅力が奪われ、そして今や訪問介護ヘルパーの平均年齢は60歳を超えています。
若い人が魅力を感じる仕事には、到底なり得ていません。
この状況を変えるには国が国費を投入して、制度そのものを改善しなくてはなりません。
・・・・そんな内容のお話でした。
私も全く同感です。