『虎の翼』

2024年05月15日

NHKの朝ドラ、『虎の翼』を観ていますか?
私は毎朝録画して観ているのですが、今回の朝ドラは今までの作品以上に面白く、そして深く考えさせられます。
日本の女性で初めて弁護士資格を取得し、その後裁判官になった三淵嘉子さんをモデルとしたドラマです。

明治大学に「専門部女子部」が開設されたのが1929年(昭和4年)。
三淵さんがその専門部女子部を卒業したのが1935年(昭和10年)、明治大学法学部を卒業したのが1938年(昭和13年)。同時に司法試験に合格。そして1940年に弁護士に。

ドラマの主人公・虎子が弁護士を目指すきっかけとなったのは、たまたま行った明治大学法学部の授業で「女性は結婚すると無能力者になる」と民法に記されていると知ったことでした。
妻が働くためには夫の許可が必要、妻の財産は夫の管理下にありました。ドラマの中では、夫の不貞により夫婦関係が破綻し、別居中の妻が母親の形見の着物を取り返すために裁判に訴えるというエピソードまで織り込まれていました。

虎子たちが専門部女子部に入学した時マスコミが殺到し、しかし入学を心から祝っているというよりは「女のくせに法学を学ぶなんて」という冷笑を含んだ取材でした。
「女のくせに」「女が」という言葉が常に付きまとい、女性の幸せは結婚にあると決めつけられ、学ぶ女性たちは「行き遅れ」とさえ言われます。
虎子と共に法学を学んだパートナーが弁護士である女性は、唐突に夫から離婚を言い渡され、自分が生んだ息子にさえもう二度と会えないと言われます。
夫が妻を一人の女性として見る姿勢が全くないこの家庭に育った息子は、父親と同じように母親を見下しています。

今週はようやく弁護士資格を取得した虎子なのに「女性」だというだけで弁護を断られ、法廷に立つことができない様子が描かれています。

毎日毎日、腹が立ったり悔しかったり、どうしてただ女性だというだけでこんなに息苦しい人生を歩まなくてはいけないのかと悲しくなります。
そして今、その社会は一体どの程度変わっただろうかと考える時、さすがに昨今はここまで露骨ではないとは思うものの、やっぱりジェンダー平等とは程遠い社会だと思います。

ただ4月から始まったこの番組にずっと感動していることがあります。
1930年代、昭和一桁から二桁に入ったころのこの時代は日本は戦争に向かってまっしぐらな時代でした。「産めよ増やせよ」と女性には子どもを産むこと、将来の兵隊をたくさん生み出すことを強く求められていた時代でした。
そんな時代に司法試験を女性も受けられるようになったとか、裁判官や検事は無理だけど弁護士には女性もなれるという変革が進んだということはオドロキでした。

ただ、今日はその理由もドラマの中にしっかりと描かれていました。
男性がどんどん徴兵され、出征し、労働力不足は弁護士にまで及んでいたという事実です。裁判官や検事などの国家的な仕事は男性にしかできないけれど、弁護士なら女性でもやれるだろう・・・。

やっぱりどこまでも女性は見下されていたのだと知り、またまた悲しくなりました😢。

でも先週金曜日、司法試験に受かった虎子のスピーチは感動でした。

「私たちはすごく怒っているんです。法改正がなされても、結局女は不利なまま。女は弁護士にはなれても、裁判官や検事にはなれない。男性と同じ試験を受けているのにですよ!
女というだけで、できないことばっかり。そもそもがおかしいんですよ。元々の法律が私たちを虐げているのだから。
生い立ちや信念や格好で切り捨てられたりしない。男か女かでふるいに掛けられたりしない社会になることを、私は心から願います。
いや、みんなでしませんか?
しましょうよ。
私はそんな社会で何かの一番になりたい。
そのために良き弁護士になるよう、尽力します。困っている人を救います。男女、関係なく。」

ぐ~っと、胸が熱くなるスピーチでした。