『最後の面会』名取事務所

2024年10月19日

少し前の話になりますが、とてもショックな舞台を観ました。
『最後の面会』(名取事務所)。

オウム真理教が起こした地下鉄サリン事件。
日比谷線で他の実行犯よりも多い3袋を散布し、オウムへの忠誠心が厚くダーティーワークを厭わずに実行する「殺人マシーン」と報じられた林泰男をモチーフに描かれた舞台でした。報道とは全く逆にとても冷静にオウム真理教を見ていて、実は疑問を抱いていた。
しかしそこで半旗を翻すのは命がけのことであり、一度入信してしまったらもうその歯車から抜け出すことはできないと苦しんでいたこと。
オウム入信の引き金の一つに、在日朝鮮人だという事実のなかで生き方に苦しんでいたこと。
サリンを散布するときには、自分自身の中に「やめろ!!!」という声が聞こえていたのに、それに従うことができなかったこと。
などなど、林泰男の苦悩が描かれています。

その苦悩を引き出すのは若い女性の面会者で、「私の質問に答えてくれたら、あなたの家族に会わせます」と言って林泰男に面会を求め続けました。
実はその女性は林泰男をかくまってくれていた女性で、ふたりは心通い合う関係でした。
その女性から生まれた若い女性。
父親は林泰男で、地下鉄サリン事件の実行犯で、「殺人マシーン」と呼ばれる男。
その事実に苦しみながら林泰男に面会を求めてきたというのに、そこで分かった新たな事実は女性の父親は林泰男ではなく、麻原彰晃だった!!!

おぞましき麻原彰晃のレイプによって自分が生まれたという事実を知った時の、更なる女性の慟哭!!!
まだ、殺人マシーンの林泰男を父親だと信じて、憎み続ける方がどれだけ楽だったか!!!

そんなことを描いた一作でした。
私にはどこまでが事実で、どこからが創作なのかわかりかねます。
それでも女性の苦悩も林泰男の苦悩も十分理解できる気がして、苦しくて苦しくて。帰りの電車の中でもまだ息苦しくて、とても眠れそうにない!!!

そんな思いにさらされた一作でした。