『眠っているウサギ』作者くるみざわしんさんのお話

2024年10月05日

来年1月19日(日)、三郷文化会館で『眠っているウサギ』(くるみざわしん作、劇団コーロ)が上演されます。
埼玉県・三郷市・吉川市教育委員会の後援をいただき、私が所属している三郷吉川ぶんかむらと不登校の子どもたちの居場所をつくる会「SKYせる」が協力しての開催です。
昨夜は精神科医で劇作家のくるみざわしんさんにお出でいただき、プレ企画を開催しました。
くるみざわさんと劇団コーロの代表、そして三郷吉川の市民、合わせて13名が参加しました。

2011年、大阪の梅田の線路の高架下にいたホームレスの男性を高校生が襲って、死なせてしまうという事件が起こりました。この事件に発想を得て作られたのが『眠っているウサギ』です。
くるみざわさんがどうしてこんな事件が起きるのだろうと考えていた時に出会った、「ホームレスの襲撃について考える会」。
そこで1月の公演にもアフタートークでご参加いただく予定の生田武志さんに出会ったそうです。
子どもがホームレスの方を襲ってしまうという事件はあちこちで起きています。
そういうことが起きないように生田さんは、学校にホームレスの方に来ていただいて背景を語ってもらう活動をしているそうです。
同じ人間であり、何をしても良い相手ではないことを子どもたちに伝える取り組み。
その活動に深く共感したくるみざわさんは、こういうことをいつか演劇で取り組んでみたいと思ったそうです。
そして劇団コーロから「子ども向けの作品を作ってみないか」と声をかけられ、「眠っているウサギ」が生まれたということです。

お話を聞きながらふと思ったのは、8月に観たくるみざわ作品『戻り道を探して―ミレナとカフカとマルガレーテ』にも同じ課題が貫かれているということでした。
カフカの小説『変身』。主人公が朝目覚めると、害虫に変身してしまっていた。家族はパニックに陥り、主人公を隔離し、父親にリンゴを投げつけられて死んでしまうというお話しです。
同じ人間を「害虫」扱いすることによって、殺しても良い、何をしても良い対象とされてしまう。
そうして名古屋入管でウィシュマさんが亡くなるというような悲しい事件が今も起きています。
そういう現実に一石を投じる舞台だったと思います。

「同じ人間なんだ」「何をしても良い相手ではない」。大切にしたい言葉だと思います。

「ウサギとカメ」の物語で、ウサギが寝ている間にカメに追い抜かれてしまい、ウサギは競争に負けてしまいます。ウサギは愚か者、怠け者の象徴のように私たちは受け止めています。
でもくるみざわさんによると中東では受け止め方が違い、カメの方がバッシングされるそうです。
「寝ている人の横を通り過ぎて、それで勝って嬉しいのか?」というような考え方をされるそうです。
面白いなぁと思いました。
考え方というのは人それぞれ違うけど、国やその地域の文化によってもすごく違うんだなぁと知りました。
当たり前のことだけど。

日本では競争社会の中で、勝者が〇で敗者は✖。
そういう考え方た私自身の中にも潜在的にあるんだろうなぁと気付かされました。